九月二十日 松山例会レポート  今里浩紀

 時折小雨が降るあいにくの天気の中、歌遊さん、葉さん、ぼくの三人で例会を始める。個人的な用事で高知に行っていて、帰れなかったら歌遊さんには連絡がつかなくて迷惑がかかるなと心配していたので、無事に開催できてほっとしたというのが正直な気持ち。場所は先月と同じく酒八支店、海鮮料理のおいしいお店のお座敷である。
 適当に料理を頼んだ後、今年の乱歩賞の感想からスタート。といっても、ぼくと葉さんしか読んでいないのだが。「翳りゆく夏」は平均点でそれ以上でもそれ以下でもないということで意見が一致。「マッチメイク」は文章が下手。主人公の一人称で書かれているにもかかわらず、主人公が苗字、他の登場人物が名前で同一人物を呼ぶために誰のことを言っているのかまったくわからないという小説的には致命的な欠点があり、読みづらい。さらに、主人公はプロレスラーを目指しているのにプロレスのことを知らなさすぎとか、「翳りゆく夏」だけでもよかったかもと意見がでる。先月の例会で霧舎巧よりも文章が下手ということを話したのだが、葉さんも読んで納得していた。これから読む歌遊さんも納得すると思う。文章がうまくなれば、面白くなるという意見には疑問があるけれど。それでも、葉さんは渡辺蓉子「左手に告げるなかれ」が乱歩賞ワーストというのだが、「マッチメイク」よりひどいとなると、どれだけひどいのだろう。ページをめくりたくなくなるくらいかな。
 課題本だったエリス・ピーターズ「聖女の遺骨求む」光文社文庫は普通の物語という感想でみんなの意見が揃った。修道士カドフェルのお話だが、トリックもなく、淡々と物語が進んでいく感じで、終わっても特に何も残らない。修道院の話で宗教的な背景が物語の根底にあり、その点がピンとこないために面白くないのかなと思っていたのだが、現在の無理矢理こじつけたトリックの複雑さに慣れているために、シンプルな殺人に物足りなさを感じるのかもしれないということで納得した。
 宮部みゆきは二ヶ月かかって読めなかった時代小説が「あかんべえ」だということが判明したり、「模倣犯」は読むべきとかいうことで、あれは痛いだけで全然救いがない本だから読んでも仕方がないとか、そういう四方山話が飛び交う。もっと盛り上がった話もあるけれど、それはミステリとは関係ない話で。高松合宿で再び盛り上がることになると思う。とにかく、面白い本を探しましょうということで幕を閉じた。
 勝手に決めてしまったが、次回高松合宿までの松山組の課題本は石田衣良「波のうえの魔術師」文春文庫、裏課題本が今年の乱歩賞受賞作「マッチメイク」講談社となった。この本を読んでおくと、例会レポは三倍くらい笑えます。
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