僕たちは熱病だった
ありもしない夢を見ていた
大人だったり子供だったり
男だったり女になったり

僕たちは熱病だった
曲がりくねった道を見ていた
見ない聞かない言えないことで
胸がふくれてはちきれそうだった

みなさん，こんにちは。
橘　右近です。
まずはお約束のように自己紹介から。
本名　桜葉あかり。２３歳。
職業は調香師。香水作ったり化粧品作ったりしてます。
とあるミステリサークルの会員で，毎月の企画原稿にひーひー言わされてる毎日。

今日はわが社の親善大運動会です。
ふれふれ坊主の願いも虚しくとってもとってもとーってもよいお天気。もちっときばれよ，秋雨前線。
あたしは運動なんて大っ嫌いよ！！！！！
何が悲しくってこんなかんかん照りの日にお外にいなくちゃいけないのよ。
だいたい社会に出てから運動会なんてやるとは思ってもみなかったわ。
やっぱ，うちの社長ってヘン。
ちなみに，この運動会，各課に分かれて得点を競い合い，１とーしょーの課には賞品が出る。
あと，社長の独断と偏見によるＭＶＰには３日間の有給休暇がでる。
あたしの所属する第３研究室は総勢８名。もやしっこばっかりなのではっきり言って運動会に対する期待のない職場。
総勢３０名とかで元気な若い男ばっかの営業部に勝てるわけないじゃないか。
でも，参加することに意味がある。とか言われてしまうんだよね。泣けてくるわ。
めったにあたらないお日さまにあたってくらくらしてきたよ。
まだ最後にコスプレスウェーデンリレーのアンカーが残ってるんだけど・・・・。
これは仕事中の格好（営業はスーツにネクタイ。あたしらみたいな研究室務めは白衣）でスウェーデンリレーをするってもの。
スウェーデンリレーは知ってるよね？
四人の走者がそれぞれ100メートル、200メートル、300メートル、400メートルの異なる距離を走るリレー。
アンカーは400メートルも走らなきゃいけないんだよ。去年のＭＶＰのぽちに勝てるわけないじゃない((ｐ（＞ｏ＜）ｑ））いやだぁぁ！

え？　ぽちって誰だって？　まだ紹介してなかったっけ。
あたしの同居人で，本名　保知笙悟。２５歳。
同じサークルの会員でＰＮはぽち。
仕事はあたしと同じ化粧品会社で営業やってるサラリーマン。営業１課にお勤めです。
純和風な男前で，ぱっと見はｃｏｏｌ。ホントのところは熱血漢。
スポーツ万能なあたしのカレシ。

本人は今メモを片手になんだか悩んでる様子。
このメモは今朝，会場に着いたときに渡された宝捜しの暗号だったりします。
宝物は１０万円分の商品券。
何度も言うようだけど，やっぱりうちの社長ってヘン。
宝捜しの企画・立案は社長が１人でやったんだって。
暗号，見てみたい？　では，お見せしましょう（←エラそう）

ヘンな文章。松下って言うのは社長の名前だけど。
真紅の血に彩られた楕円って何？
宝物はこの運動場のどこかにあるって言うのは風のウワサで聞いたけどさ。
「なんか解った？」
解読をそうそうに投げ出してたあたしは興味に駆られてぽちに聞いてみた。
「暗号化にはいろいろ方法があってな・・・・」
難しい話は今聞きたくないのよ。
ぽちの言葉をあっという間にさえぎってやる。
「ペリドットってなんだ？」
「宝石よ。オリーブグリーンのきれいな色でね。８月の誕生石だったかな？」
だから何よ。
「この文章，おかしな所がないか？」
へ？　全体が変だと思うけど。
「例えばココだ。＜是は密室殺人である＞ふつう”これ”は漢字では書かないだろう」
まぁ，そうね。
「それからココだ。＜真紅の血に彩られた，楕円の中に答はある＞”真紅の血に彩られた楕円”　で１つのものを表してるんだから，間に句点が入るのはどう考えてもおかしいだろう」
字数あわせかな？　８文字目を拾ってみたら？
ダメね。文章にならないもの。
「それだとヒントの中の＜傾いた事件を解決するのは＞って意味がないだろう」
あ，そっか。
「ペンとメモ帳持ってるだろ。貸せよ」
ぽちはなんだかカリカリ書き出した。
途中で首を傾げたり，ふむふむなんて頷いたりしながら。
「解けたぞ」
ほえ？　もう？
答は何ナニ？