最後の女神

いちばん最後に見た夢だけを
人は覚えているのだろう
幼い日に見た夢を 思い出してみないか

あぁ あれは最後の女神
天使たちが歌いやめても
あぁ あれは最後の女神
まぎれもなく君を待ってる

みなさん,こんにちは。
橘 右近です。
まずはお約束の自己紹介から。
本名 桜葉あかり。23歳。
職業は調香師。香水作ったり化粧品作ったりしてます。
とあるミステリサークルの会員で,毎月の企画原稿にひーひー言わされてる毎日。

今月のお題は?

「クリスマスにちなんだミステリ」

くりすますだぁ?
日本人なら潅仏会を祝えよ。
潅仏会っていうのはお釈迦様のお誕生日会のことね,念のため。

世間様はイヴだクリスマスだって浮かれ騒いでいるけどね,仕事なんだよ,わ〜るかったな〜〜〜。
ぽちも出張だし,あたしの世界じゃクリスマス,なにそれ? っていや〜な感じ。

え? ぽちって誰だって? まだ紹介してなかったっけ。
あたしの同居人で,本名 保知笙悟。25歳。
同じサークルの会員でPNはぽち。
仕事はあたしと同じ化粧品会社で営業やってるサラリーマン。営業1課にお勤めです。
純和風な男前で,ぱっと見はcool。ホントのところは熱血漢。
名探偵なあたしのカレシ。

予約しておいた豪華ディナーも当然キャンセル。
悔しいからイヴの今日はとあるハンバーガーショップでチキンを買って香ばしく揚がったのを食べながらディケンズを読んでる。
クリスマスキャロル。
なんだか寂しくて涙が出てきた。
今までだっておんなじクリスマスを過ごして来たのに。ヘンなの。
たった2晩イヴとクリスマスに一人でいるだけじゃない。
去年まではずっと独りだったのに,たるんでるぞ,右近さん。

ショウガナイカラ原稿デモ書コウカナ

ぼんやり考えてパソコンを立ち上げた時だった。

知に杜に解すなる 埜射の乃羅耳と忍羅那瑠

なんじゃ〜ヽ( ̄~ ̄ )ノ ハテ?
ポップアップで妙な文字が浮いてきた。

新種のウイルスか!? なんて考えてたら,手元においてあったケータイが「P.S.I LOVE YOU」を奏でた。
ありゃ? ぽちからだよ。

『解けたか?』
第一声がそれかい!?
「どちらさんですか?」
つめた〜い声で返事してやる。
『何,拗ねとんや? 俺がおらんで寂しかったんか? ん?』
酔ってるよ,こいつ。
「あほ」
一言のもとに切って捨てて,電話を切ろうとしたときだった。
『パソコン,立ち上げてないの?』
ふと,まじめな声で問いかけてくる。
「なに,あの妙な文章は笙悟なの?」
『解読してみろよ』
囁くような声。ちょっとかすれた声が色っぽい。
「なんでそんなことしなきゃいけないのよ,やだ」
照れ隠しにぶっきらぼうに返事する。
『自信ない?』
含み笑いで尋ねてくる。
扱いかたバレてるね。
負けず嫌いだからそんなこと言われたら弱い。
「そんなわけないでしょ」
『じゃ,解いてみせろよ。簡単だろ』
ずいぶん挑発してくれるわ。
「ちょっと,ヒントはないの?」
『パソコンの前で考えりゃわかるよ。じゃ,土産を楽しみに』
かかってきた時と同じように一方的に電話が切れて,あたしはパソコンの前で途方にくれた。

 

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