『パタリロ!』はミステリマンガである 第1回 実は最初からミステリマンガであった。

 『パタリロ!』は主に単行本48巻以降の「パタリロ!ミステリー」シリーズあたりからミステリ色が強くなっていった。しかし、しかし、実は第一話からミステリマンガであったとは、だれも気付いていない。そう、『パタリロ!』は最初からミステリマンガだったのだ。
 えっ、どこがミステリマンガなんだって? 仕方があるまい。説明しよう。

 とはいえ、この第一話について、簡単な補足をしておく。
 元々この話のタイトルは「美少年殺し」。そう、主人公はバンコランだったのだ。しかも読み切り。ところが人気投票でかなり良かったらしく、続編を書くことになった。そのため、再びパタリロとバンコランを絡ませることに。そうしたら、なぜかパタリロの方も人気が出てしまい、とうとう連載になったのだ。バンコランにとっては、非常に迷惑な話である。

 さてさて、第一話の粗筋だが。
 ロンドンにマリネラ国王の王子が親善使節として来ることになった。チャーター機で飛んできたのはいいが、どうもふらふらした飛び方をしている。と思ったら、ヒースロー空港の展望台に突進。王子パタリロ8世が操縦席をいたずらしたためであった。そのことを憂慮したのか。それとも、マリネラ王室と内閣総理大臣との間に軋轢があり、政情が不安定になっている現状、英国でパタリロの身に何かあってはならないと判断したか、MI6随一の凄腕、バンコラン少佐がボディガードに付くことになった。これが二人の腐れ縁の始まりだとは、誰も知らなかった。
 このバンコラン少佐、腕の方も随一だが、実は「美少年殺し」とあだ名が付くほどのプレーボーイ。どんな美少年も、バンコランに見つめられるとポッとしていいなりになってしまう。
 パタリロが英国に来たのには理由があった。国王が英国留学中、女性のことで問題を起こしたらしい。その女性とやり取りしたえげつない手紙が、自分の描いた絵の裏に隠した。しかもその絵を、帰国前にロンドン美術館に寄付していた。もしその手紙が大臣の手に入ると、スキャンダルのネタにされることは必定。そのためにお小姓のジャダといっしょに絵を盗む計画をしていた。バンコランをうまくまいて(実はまいていなかったのだが)、絵を盗む計画を実行。果たしてどの様にして絵を盗むのか。

 どーですか、お客さん。どう見てもミステリでしょう。まあ、この絵を盗むトリックは、推理クイズでは有名なトリックなのだが、なかなかうまく出来ている。パタリロは警備員の目の前で堂々と絵を盗むのだ。どんなトリックかは読んでからのお楽しみである。もちろん、絵を盗んで終わるわけではない。そのあたりの構成も、ミステリの構成と全く同じなのだ。
 作者、魔夜峰央がミステリファンかどうかはわからないが、多分かなりのミステリマニアだろう。きっちりした組立はまさしくミステリである。しかも合間合間にはきちんとギャグが入っており、結末もちゃんとギャグで落としている。ギャグとミステリの融合という難題に挑んでいるのだ。作者の並々ならぬ力がわかるというものだろう。


 第二話「墓に咲くバラ」では、ヒギンズ三世国王がテレビゲームのしすぎによる心不全で亡くなるところから始まる。ところが、告別式を前にロンドンに行くパタリロ。実は伯母が亡くなり、従兄弟のサッチャーをマリネラに迎えることになったのだ。ボディガードはまたしてもバンコラン。ホテルに泊まるパタリロ、サッチャー、バンコランだが、いきなり銃声が。「身の回りの世話をするために付いてきたお付きの武官」が正面から肩を撃たれていた。どうやら非常階段から逃げたらしいが、パタリロは疑問を抱く。頼りないタマネギ頭をしていても、兵士としての訓練は受けていた。その武官が何の抵抗もせず正面から撃たれるのはおかしいと。ここにもトリックがあった。

 こちらも簡単ではあるが、効果的なトリックを使用している。古いトリックかも知れないが、漫画というフィルターを通してみると、意外と新鮮に映るものだ。時折ギャグを交えながら、真相に迫るパタリロの姿は、後の二等身キャラからは考えられないぐらいまともである。


 どうだろう。『パタリロ!』が最初からミステリマンガであったことがわかっていただけたであろうか。何? まだわからない? 仕方がない。さらに続きを書くことにしよう。それでは。

 

 

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